ロングウェイホーム

大きな橋を渡り 県境を越えたら
夕立がこしらえた 水彩画のなかへ

バックシートに物語ひとつ乗せて
薄紫の街角 見紛う人影を振り払う

遠い日の夢 何度でも膨らませば
紙風船 飛ばす子供のように 息は切れるばかり

ああ 揺るぎない足取りでうちへ帰ろう
常夜灯の虫たちも鳥の群れも 幼い日の空に消えてく

谷間の駅はやがて 黄金色の息を吐く
ガラスケースを磨く あの娘も帰る頃

祈りの声が雲に跳ね返されても
ぬかるみをよけるように
すぐに忘れられたらいいのに

曲がりくねった川に沿って 車を飛ばす
月をめがけて飛ぶ魚も僕も 風にはなれない

遠い日の夢 拾い上げ うちへ帰ろう
赤煉瓦の冷たさと夜の闇が 目くらましを仕掛ける前に
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