僕を友と呼べますか

下宿先の 物干し台に寝ころがって
きみと僕は 冬の星座をながめていた
流れ星のたび 起き上がるきみに
どんな願い事だと 冷やかし たずねたら
たった一言きみは答えた 想い伝える勇気が欲しいのだと

春はめぐり 可愛い姪っ子がくれたんだと
シャボン玉を 物干し台から飛ばしながら
きみはつぶやいた 壊れて弾けるシャボンのように
自分も壊れて消えたいと
冗談よせと肩を叩いた 明くる日きみは 荷物とともに消えた

ああ 季節が過ぎて行く ああ どこかで笑い声
振り向き呼びかけても あの頃は帰らない

ある秋の日 教会で式を挙げました
僕の花嫁が きみがいればと言ってました
元気でいるなら それでいいけどと
笑う彼女から僕は そっと目をそらした
九月の空は冷たいほど青く
シャボンがひとつ 舞い上がって 弾けた

ある夏の日 きみによく似た人見掛けて
商店街を 過ぎて行くバスを追いかけた
応援するよと 遠いあの冬の日
励ます僕にきみは 照れ臭そうにうなずいた
なのに彼女に きみより先に 僕はだまって愛を告げたんだ

どれほどきみが彼女を 想っていたか知っていた
夏のゆがみの中へ バスは飲み込まれた

久しぶりに 仲間と集まった帰り道に
僕は一人 冬の星座を眺めていた
誰が言ったのか どこで知ったのか
きみがすでにこの空の星になっていたなんて
冗談よせと肩を叩いた あれがきみとの最後になりました
冗談よせと肩を叩いた 僕の右手でシャボン玉 弾けた

ああ 季節が過ぎて行く ああ 遠くで笑い声
振り向き呼びかけても 誰一人答えない
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