枇杷に捧ぐ

うなだれた形になった
影は濃くて 夏に吐きだされた

そのままの青さで たった産声みたいに
しおらしく固めた右手は空を切った

この雲は夏を伏せて
うなだれた僕らの熱を奪うんだ
そう言った、その危うさで
僕らは夏に吐き出された

それはどこか帰れない場所
枇杷の実がとおく垂れていた

嫌いじゃなかった君の臆病さと
転げたところで笑うしか出来ない僕に

枇杷の実がぬるく揺れてた
吐き出した種は二人に重なる
夏の大気の静けさで 君だけが空を傾げてた

「ハロー、ハロー、最後に見た景色を憶えてるかい?」

夕陽色に戸惑って 僕ら散り散りになって、あぁ

子どもじみた遊びをして僕らはいつか摩滅し合うんだ
そう言った、その危うさで
うなだれ、仰ぎ、口をあけた

この雲は夏を伏せて
しおらしい暴力で熱を奪うだろう
忘れるための思い出を
君がくれた枇杷に捧ぐ
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