まぼろしの日

冬のあいだ眠っている 君の横で起きている
浮き上がったその水面に 丸くひらく夢を映せ

水の中を泳いでいる バスにみんな手を振ってる
規則正しい君の寝息は いずれ小さな渦になる

君はもう春の夢を見てる 蟻をそっと手に移した
君はもう春の夢を見てる 僕はそこに行けないんだよ

枯れた蜘蛛の脚の数を不思議そうに教えてる

僕は鴉に石を投げる 君の代わりに石を投げる
最後の灯油が切れたなら 誰も知らない二人になる

君はもう春の夢を見てる 少女になって野を駆けてる
君はもう春の夢を見てる 君の知らない星が照らす

おやすみなさい 今 灯りも消えたよ
君の知らない 冬のあいだのお話を聞かせてあげる

明日誰か優しい人が 毛布をかけてくれるから

始まりの風が胸を巡る そんな朝を君は知ってる
歓びの風が胸を満たす そんな日々を暮らしていて

おやすみなさい ほら、今日が終わってしまうよ
僕の知らない 冬のあいだ眠ってる君の夢を、あぁ
星がきれいだったの、とっても寒かったの
だけどもういいんだよ それは君がくれた、まぼろしの日

冬のあいだ眠っている君の横で溶けていく

おやすみなさい 今 灯りも消えたよ
何も聞こえなくなって、らららら、
僕は少しだけ 唄をうたったよ

君の寝息がくすぐったくて 僕はとてもあんしんでした
冬のあいだ眠っている君の横で 消えていく
×