惜春

最後の荷物 まとめ終わって
父さんが ぼんやりと
畳の縁 さすった
「遅くなるから そろそろ行こう」
肩たたき 叔母さんさん笑う

台所の灰皿は
母さんの匂いがする
弟の友達が Ah-
手を振った

見慣れた風景が 涙で 滲んでく
幸せが 両手から こぼれ落ちる
春 まだ 浅きまま

遠くに白い 校舎が見える
春休み グランドが
夕焼けに染まり始める
部屋の棚に 隠したノート
君だけは 忘れないでね

携帯に残っていた
母さんの不在通知
聞かないで 消してしまう
今日はもう

大人にならないと
わからないないものが有る
真実は 私には 幼すぎて
雪 さえ 舞ってきた

4人で笑ってる 1枚だけの写真
桜咲く 校門で 2年前の
春 まだ 浅きころ
浅きころ
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