1999

99歳になって お迎えがきて
遠い昔の幻を見た
後悔はなくて なぜか無性に
あの日のことが
なつかしいだけ

あなたと出会う前の 19歳

街は 機械じかけのジオラマ
目映いほどに光るわ
疲れたまぶたを閉じるの
進みすぎた 時計の針を戻して
この世のどこかに
もっと 美しいことが
あるような気がして

99歳になった 夢を見ていた
辿る景色は 思い出のよう
実際は 今日も遅刻間近で
おむかいさんに 挨拶しよう

あなたにいつか出会う 19歳

埒のあかない 日々のシナリオ
追われるように過ぎゆく
寝ぼけたまなこをこするの
眩しすぎる朝日を
浴びて輝く 世界はのどかで
ちょっと 難しいことを
考えたりした

愛してみたいわたし 19歳

まるで とるに足らない日常
味のないパンに似てる
とろけるバターを召しませ
いつの日にか 退屈すぎた暮らしが
虚しくなるなら
ぐっと 小気味いいほどのスリルを
刻み込もう 描かれた地図はいらない
この世のどこかに もっと
美しいことが あるような気がして
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