鯨工場

僕らの唄はどこに届いているんだろう。
「鯨波の街」の海辺で誰か泣いてるの。

それに気付いたの。海の深くから、僕で遊んでる鯨の歌声。
幼い頃から耳鳴りの様に遠くで、彼らはそっと鳴き始めていたよ。

夢の中のあの話、本当は何処かで続いていた。
本の家の少女たち、気付かないまま。

僕らの声はどこに届いてゆくんだろう。
雨の日の言葉は誰の声だったの。
僕らの声はどこに続いてゆくんだろう。
体だけ無い鳥がどこかで見てるの。

階段の上から眺めたベランダ、青いカーテンが隠してた景色。
何も知らないで音符を置いてる。小さな部屋の中で何かを造ってた。

街外れの工場に煙突が綺麗に並んで。
錆びた鉄の匂いだけ微かに触れる。

僕らの唄はどこに届いているんだろう。
帰り道の途中、見慣れない路地裏。
僕らの唄はどこに続いているんだろう。
首だけの鳥は神社から飛び立った。

僕らの朝はどこに隠してしまったの。
鯨の歌声が夢を崩してく。
僕らの朝は次の唄で明けてゆくの。
「鯨波の街」の海辺で君は泣いてるの。
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