菜の花恋唄

情けの深さと 気風(きっぷ)よさ
惚れりゃ一途な 漁師(ひと)でした
布良港(みなと)離れた タイ釣り舟は
大波(なみ)にのまれて 戻らない
菜の花の 菜の花の 咲く頃に
祈ればきっと 逢えますか

両瞼(まぶた)を閉じれば 手招(てまね)かれ
嫁に来いよと 呼ぶような
手縫い浴衣は 通さぬままに
桐のタンスで 待っている
菜の花の 菜の花の 咲く頃に
夢でもいいの 着てほしい

時化(しけ)ならいつもの 縄暖簾
徳利ならべて 流行歌(はやりうた)
猪口(ちょこ)で交わした 過去(あのひ)の契り
酒場の隅には 名残り酒
菜の花の 菜の花の 咲く頃に
帰って来てね 酔わせてね
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