memoirs

病的な白い明かりだけが煌々と部屋を照らす
堆く積もる灰とジュースの缶 埋もれる部屋と心
僕は一人でここにいて これを書いている
伝えたいわけじゃない ただ辛いから

最初の話をしよう
あれはそう 萌えた芽が花開き 鶯が鳴き始める頃だった
僕らはまだ幼くて 歩き始めたばかりの道に見ていたのは
希望という美しくて今思えば残酷な光だけだった
出会った僕らはこれでもかってくらい夢について話して
恰もそれがもう定められた運命かのように 至極当然に
叶うはずの願いとその形を見せびらかし合ったね
それを笑う人なんてどこにもいなかった
話し疲れて お酒も元気も空っぽで
だけどそれでもこの上ないくらい満たされていたのは
一人じゃないって そう思えたからなのかな

3時間も眠ればゼンマイは全開で
擦り切れるまで忙しなく どこまでも行けたんだ
そうやって作り上げた景色に目一杯感動したりして
間違ってなかったってファインダーにピースしたよね
そりゃ失敗することもあったから嬉しかったわけで
有り余る床に泣きながら伏せたこともあったわけで
そういうもう数え切れなくなった思い出たちを僕らは
いつの間にか随分積み上げてきたんだなぁと
星が降りそうな夜に煙と息を混ぜながら笑ったんだ
それから駅までの少し長い坂道をゆっくりと歩く僕にきみは
負けんなよって小さな声で呟いた
負けんなよって少し寂しそうな顔で

どうしてきみはいなくなってしまったの
どうしてきみは僕をおいていってしまうの
どうして約束は果たされないの
どうして どうして どうして

希望が苦悩となって重く圧し掛かり
理由が義務となって強く責め立てる
そんなこと始めから僕たちはわかっていたじゃないか
そんなこといつからか受け入れていたじゃないか
それでも歌ってこれたのは確かにきみがそこにいたからで
きみだけにしか歌えない唄をきみが歌っていたからで
それはきみだって同じだったんじゃなかったの
同じだったって そう 信じさせてほしいよ
いつまでも いつまでも いつまでも いつまでも
あの最初の一音をでっかく鳴らした瞬間に酔いしれていちゃダメなのかな
いっせーのせで無敵になれる僕たちは
その実こんなにも脆く儚くか弱いだなんて
笑えてくるよ 笑うしかない
胸倉掴んで喚き散らす僕と零れる涙を抑えることの出来ないきみ
その口からごめんねなんて言葉 一番聞きたくなかったのに
それだけは聞きたくなかったのに

病的な白い明かりだけが煌々と部屋を照らす
堆く積もる灰とジュースの缶 埋もれる部屋と心
僕は一人でここにいて これを書いている
伝えたいわけじゃない ただ辛いから
×