Evening

薄目開いて 車窓に目を遣る
やっと開いた花が散りそう

東京は午後9時 宵を駆け抜ける
山手線から 月がきれいです
僕らは今なお どこへも行けないで
繋がれたまま どこへ向かってる?

聞き古された発車メロディー鳴って
何かを分かつように 扉は閉まった
恥じらいとは無縁って
顔した人たちが眺めてる
凡庸なスマートフォンに
押し込まれたパーソナリティ
奪い合って勝ち取る 椅子取りと都市開発で
鮮やかに色を増し 消え去ったストーリー
白黒つけるばかり

東京は午後9時 迷いを紛らせて
山手線にて きみを想った
月は今夜もどこへも行かないで
夜の結び目をただ担ってる

東京都市部
生まれても染まれぬ街で
ささやかにブルーになって

何度も間違う
乗り換えのホームでひとり
藍染めのように思い出す

この街は
過去さえも看取らぬままに
表情を変えてゆくな

東京都市部
それぞれが息づく街へ
帰るとも言えぬ 帰路に就くのだろう
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