みりん

みりんの使いみちがわからなくて
いつまでも減らず 月日が経つ
みりんは使い勝手がいいらしくて
自分では買った覚えはないけど

一人暮らしを4年で終え
彼女とマンションで住み始めた。
新しいお母さんができたみたいになってしまってるところもあって。
仕事から帰ると飯があって
風呂も沸いててよくできた彼女だ。
幸せな日々は案外さ慣れてくると当たり前になるものだ。
彼女と暮らして5年が経った。
結婚というものに興味がなかった。
というより正直な話、
なんか怖くて踏み出せなかった。
互い悩んだあげく
男として見られないようになってたんだって
雑談は徐々に別れ話へと 変わっていくのでした。

いただきます。ごちそうさまでした。
机の上
お皿は僕が片付けるから。
いただきます。ごちそうさまでした。
思い出して
味が足りないのはきっとみりんのせい。

彼女が出てって2ヶ月が過ぎた。
なんだか元に戻ったみたいだ
そういえば 今日までは
あぁ全てがそのままだ
少しはまともな生活をおくろうとして
あの子の残したものを捨ててみたけれどもさ
ふとした時に忘れ物を見つけたり
ひとりになった途端にまた
Tシャツがシワだらけになった
どうやって洗濯してんだっけな
だらしなさだけ浮き出る部屋
思い出の数が多ければ
寂しさも増えるものなのさ
ひとりじゃ使い方わからないし
残りのみりんを流した。

いただきます。ごちそうさまでした。
机の上
お皿は僕が片付けるから。
いただきます。ごちそうさまでした。
思い出して
味が足りないのはきっとみりんのせい。

いただきます。ごちそうさまでした。
日々は過ぎて
あの子も誰かと出会えるから
いただきます。ごちそうさまでした。
つぶやいて。
味が足りないのは多分僕のせい。

みりんの使いみちがわからなくて
いつまでも減らず 月日が経つ
みりんは使い勝手がいいらしくて
自分では買った覚えはないけれど。
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