いちごが染まる

いちごの種かと
あなたは尋ねる
手を伸ばして取る
黒い麻袋

双葉が芽ばえる
苗を植えかえる
良い場所を選び
いのち育ちたまえと

時を刻む大空の時計
恵むこの土の上に

一つの夜ごと
未来の方へ弾む
きらり足音 聞いて

ひいきをするように
余計な草抜く
遅くなった夜も
粉雪の朝も
寒くはないかと
藁を気にかける
地の神にいのる
いのち守りたまえと

美しい滝の音のように
葉の擦れる音がする
一つの夜ごと
春の陽が近づく
きらり足音 聞いて

あげは蝶 ひらひらと鏡に映る
ひといき永遠の空気を
吸って吐いて
柔らかな緑は恋をするように
内なる力が外へ溢れてゆく
今もう少しで
今もう少しで

いちごが染まると あなたは喜ぶ
わざわざ見にくる
頬に笑みをたたえて

時を刻む大空の時計
恵むこの土の上に
一つの夜ごと 秋の陽が近づく
しのび足音 聞いて

もんしろ蝶
ひらひらと 青葉に映る
ひといき永遠の空気を
吸って吐いて
固く閉ざした殻を
割る種のように
内なる力が外へ溢れてゆく
今もう少しで
今もう少しで

枯れた枝を取り
あたりを耕す
感謝を捧げる 少し涙こぼして

時を刻む大空の時計
恵むこの土の上に
一つの夜ごと
未来の方へ弾む
きらり足音 聞いて
一つの夜ごと
秋の陽が近づく
しのび足音 聞いて
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