アルファマの娘

七つの海から 帰る男たちで
にぎわう港に また来ていた
今日もあの人の 噂ひとつも
耳にすることもない
船乗りには 恋するなと
昔パパが 私に言ったわ
“アルファマでは よくある話さ
忘れなよ”と 海鳥(うみどり)が笑う
だけどあの人は 初めての男(ひと)よ
思い出には まだできない

あの白い船に きざまれた文字は
私の知らない国の言葉
最後の手紙は 一年も前
今頃どこの港
石だたみを かけおりても
抱きとめる 腕が違う
“愛してる”と おんなじ言葉を
言ってくれる その声が違う
波頭を越えてくる 風のつぶやきは
呼びなれた あなたの名前
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