箱庭シンドローム

ありふれた幸せを当たり前に望もう
恥ずべき事はないと あなたは言っていた
魚が空を飛べず 鳥が泳げないように
私の分相応を教えてくれた

少しずつ作り上げられた世界の歪さにはまだ気づけないまま
不自由のないことは自由なんだと そう言って私を閉じ込めた

調律の狂った音を弾く孤高のピアノ奏者
誰もがあなたを称賛するでしょう
だから好きなだけいっそ死ぬまで自作自演の箱庭で演じていればいい
あなたのためだけに歌っていたい嘘などなかった
ふたり離れずにいられるのなら
でも歌えもしない小鳥なんてあなたは望まなかった
あの日から時間は止まったまま

塵積もる柵の切れ間に ゆっくりと手をかけ
飛べたとして 何が変わるでもなく
根も葉もない充足に襲われるだけ

染み込んだ色は鮮やかさを増した 手遅れな物事は確かにあって
身勝手に塗りつけられた行為の理由を探している バカみたいね

そう ありふれた幸せを当たり前に望もう
恥ずべき事はないと あなたが教えてくれたでしょう
息の仕方も歩き方もいまさら変えられない
でも今はじめて「幸せ」の意味を感じられた

調律の狂った音を弾く孤高のピアノ奏者
誰もがあなたを取り囲むでしょう
ねえ好きなだけいっそ死ぬまで自作自演の箱庭で演じていればいい
いつの日か二人になりたかった それも儚い夢
声にならない声を張り上げる
最後の瞬間まで私たちは一人と一人だった
さようなら
あなたを愛していたわ
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