漂泊の殻

不完全な彼の物語は
不完全なまま終ろうとした。

気付いてしまった。
僕の中で僕を叩くのは僕でしかなくて。
誰かのせいにするのは、
一人じゃ心細いから。

不安を象って、
壊してしまえたら良かったな。
形が無いから、
僕には壊せなかったの。

忘れてしまった、帰り方を。
行き先も告げて無いから、
迎えも来ないな。
誰のせいにも出来なくなったのは、
あなたの事さえ思い出せないから。

苦しいのは最初のうちだけ。
本当は、空気が無くても生きてゆける。
足りないものが
確かにあったはずなのに、
この世界もこの僕もまだ壊れないや。

不完全な彼の物語は
小さな世界の中に閉じ籠る。
不完全な彼の物語は
それでも始まりから離れてゆく。
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