さよなら前夜

左側が無音のイヤフォンから
分かって欲しかった恋の歌
終点間際で目を開けて
今日も自分を愛せなかったと
疲れた顔が窓に映っている

昨日、15時、1時間の
微睡みを終えた君を見た時
もうこの部屋に来ることはないかもしれない
と思ってしまった
自転車の伴を漁るカバンの中には
未開封の飴
誰に貰ったのだろう

雨が降った後の湿った駅には
煙を吐く制服姿
踏切が泣く音を背にして
今日も星が見えない空を
眺めて朝の道を戻っている

今夜、22時、1時間の
お風呂の後に携帯を見て
君が画面だけの人になっても
平気かもと思ってしまった
朱色のリボンで逆さまに吊った花束が
寂しく微笑む
誰に貰ったのだろう

日付が変わって
明日が今日になったら嫌だな
知らない日々が始まる
本当に終わっちゃうの?
なんて君は言わずに頷いて
今までの日々を呑気に話し出すかな
その横で私が泣くかな

じゃあね、さよなら、またね、なんて
くだらない約束だけが残されて
2人の日々は青い痣のように薄れてしまう
昨日、15時、1時間の
微睡みを終えた君を見た時
もうこの部屋に来ることはないかもしれない
と思ってしまった
テレビから流れる聞き覚えのあるメロディは
甘くて切ない
誰に教えてもらったのだろう
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