あれが沓掛時次郎

一宿一飯 渡世の義理で
斬った相手に 頼まれやした
鴻巣宿(こうのすじゅく)から 熊谷(くまがや)へ
送る道中 母子(ははこ)の旅は
涙隠しの 三度笠
あれが沓掛 時次郎

好いちゃあいけねえ 好かれちゃならぬ
しょせんこの世じゃ 結ばれやせん
嫌いなふりする しかめつら
義理と人情 天秤(てんびん)はかりゃ
義理が重たい 渡世人(とせいにん)
あれが沓掛 時次郎

助っ人(すけっと)稼業は 長脇差(ながどす)頼(だよ)り
斬って稼いだ 命の綱を
韋駄天(いだてん)走(ばし)りも 間に合わず
なぜにおいらを 待っててくれぬ
おきぬ亡骸(なきがら) ひしと抱く
あれが沓掛 時次郎
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