茶色のセーター

また優しくして
また笑いかけて
全部お見通しなの
そのずるい偽物のえくぼ

「うん、似合ってるね」
そう呟く目線と
心の奥底を
見透かしながら

争いを嫌うわたしの言葉が
本音の邪魔をするけど
取り戻す日々はもう無いの
一度ほつれた毛糸のように

あぁ、可哀想な人ね
二人でいるより
独りでいる方がお似合いよ
皮肉なものね
いつも貸してくれた
茶色のセーターじゃ温まらないほど
ハダカの心は冷え切っていた
想い出に住むあなたはもういない

会話はあなたの
思いはわたしの
一方通行で
気持ちは褪せていった

でもね…
いつかあげたライターで吸ってた
煙草の匂いが消えないみたいに
染み付いた想いに
今でも惑わされて

そうあなたの気分次第
わたしは置き去り
うんざりよもうこりごりなの
これでおしまい
いつも貸してくれた
茶色のセーターじゃ防げないほど
別れの風が後押ししたの
想い出に住むわたしはもういない

いつもあなたは自分勝手だったでしょ
だから最後は、最後くらいわたしが

これからは
あなたを気遣うことも
気にかけることだってないの
だからもちろん
あなたを愛することも
愛されることも
もう全部なくなってしまう
でもこれでいいの
あなたをやっと忘れてみせるの

想い出に住む二人にさよなら
×