帰郷

帰る帰ると言いながら
今度今度で 九年(くねん)が過ぎた
土間に転がるカラ瓶は
さみしい親父の愚痴がわり
イヤーエー イヤーエー ザララ ザララ…
今夜は二人 競(きそ)い酒
負けりゃ悔しい 勝ったらさみし
東京小雪 ふるさと吹雪

あんな女をのち添えに
入れたばかりに気がねをさせて
十五才(じゅうご)で郷里(さと)をあとにした
さみしい笑顔が 目に浮かぶ
イヤーエー イヤーエー ザララ ザララ…
詫びる親父の嗄(しゃが)れ声(ごえ)
男同士で注ぎ合う地酒
胸の根雪を 溶かして沁みる

イヤーエー イヤーエー ザララ ザララ…
囲炉裏で跳(は)ねる 朱(あか)い火粉(ひ)が
おふくろみたいな 気がしてならぬ
東京小雪 ふるさと吹雪
×