端正な夜

満月が僕を 焦がしてくれたら
うわ言みたいに願ってる

濡れたコンクリート 退屈な影は
どこにも行けないままで

蹴り続けた石は今日も 排水溝に消える
いつかこうして見上げた空は 等身大のこの身をあざ笑っている

願い方を忘れた僕らは
行く宛てのない自由を睨んだ
器用に叫ぶんだよ 響きやしないんだよ
また立ち尽くしているんだよ

簡単なことだ 簡単に生きるんだ
流れ去る景色の中で

息を吸って吐いて 車窓を濡らして
留まるこの青い影

連れ去ってくれよ 夜の果てまで 積み上げたもの何もかも
すべて要らないんだよ 居座り続けた安寧も

願い方を忘れた僕らは
思い出したように悔むんだ

この手に委ねられた未来は
いつまでも小さく凡庸だった
それでも明日は来るんだよ そこで生きていくんだよ
きっと上手くやるんだよ

願い方を忘れた僕らは
「それでも」って今更呟くんだ
まだ夜は明けないだろう
端正なままの僕らは進もう
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