月が満ちる

過去になる今日と僕のこと
白と黒の音 枯れた喉
求める昨日と君の許
また生きていこうと思えたこと

何者にもなれない人生と嘆く僕に
君が歌うんだ

「それでも」
そう 君はいつだって僕を照らす
欠けない月だ
僕は、

何も知らないままでいれば
失うものなどなかったと思う
でも、譲れないものさえもない
冷めた人間でいただろう

誰の人生だって羨まない
でも何をしても満たせやしない

嗚呼 神様なんていないけど
まだ願うのは 何故なんだろう

月が満ちる
歌を唄う
そんな些事なことで
生きていたいと思えた

ああ、
間違っていたんだ
夢も愛もお金も明日も
何も要らない

何も知らないままでいれば
生きているだけで笑えたのかな

忘れたいなんて思う限り忘れられないのだろう
故に今も、

どうせ死ぬんだって知ってるのに
傷ついて縋って泣いて足掻いて息をしてるんだ?
どうだっていいんだって嘯いて
死ねないのはどこのどいつだ

望むのなら求めていけ
そうして出来た傷は挑んだ証だ
どう生きていたって悔いるのだから
今を謳え

何者にもなれない人生でも構わない
誰も君にはなれない

そう それはいつだって在る

昏れた空を染めて
月が満ちる

僕は月を詠う
君という月を、唯

言葉よりも透明なもの
想いよりもっと響くもの
形にしようと書いたのも
まだ生きていようと思えばこそ
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