猪笹王

口惜しき 不覚の 瑕で
仮初の 貌 斯かる 化言を かむ
あれよ 火縄銃と 犬
責めて 引き去れば 逆様に 破る

此れが 何ぞや 生残の 妙 (突 猛 進)
獣や 人間が 夫夫に 具う
仗を 苅って 奪って 仕舞う

御前の 銃で 寺門を 狙う
粗陋 等 堰いて 呉れまいか
私の 牙で 鳩尾を 捉う
暇を 残して 呉れまいか

恨めしき 二つの 枷
気怠気に 蹴出す 蓋し 獣の 契
礼かなど 求めぬ
伯母峰に 侍り 捨鉢に 染まる

其れが 謎や 盗人の 論 (突 猛 進)
筋を 違え 行人を 殺む
所業 曾て 唾棄 為遣る

御前の 銃で 寺門を 狙う
粗陋 等 堰いて 呉れまいか
私の 牙で 鳩尾を 捉う
暇を 残して 呉れまいか

責めてもの 果ての 二十日は
軛の 続きを 呉れまいか
私の 牙が 御前を 小突く
夢を 見せては 呉れまいか

寧ろ 上人の 拝むに 任す
投槍に 茶湯 濁すなら
御前の 銃と 吼ける 犬で
笹を 又候 散らせ