還らぬ荒鷲

思えば胸も はり裂ける
翼いためた 荒鷲が
西大別の 山のかげ
群る敵に 囲れて
早やこれまでと 火を放ち
覚悟を決めた あの姿

頼みの機銃 弾丸(たま)もつき
徳田 南の 二曹長
友機よさらば さらばよと
環河の岸の 草に坐し
燃えゆく愛機 眺めつゝ
悲憤の田坂 上等兵

寄せ来る敵に 三勇士
これで任務を 果したと
互に拳銃 握りしめ
雄々しく最後 遂ぐるとき
天皇陛下 万歳と
叫んだ声が 聞こえるぞ

鬼神もなくか 我もまた
武士に劣らぬ 天晴れさ
涙の田中 部隊長(たいちょう)が
英霊眠る 敵陣に
ハモニカそえた 花束を
捧げて讃う その勲功(いさお)
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