鈴蘭峠

母を想うて 夜露にぬれて
旅の乙女は 峠を越える
峠三里に 鈴蘭咲いて
月も匂うよ 春ゆく夜を

旅の乙女は 菅笠小笠
紅い緒紐(おひも)が 夜風に揺れる
涙ながして 鈴蘭摘めば
母のおもかげ み空にうかぶ

旅ははてなし 我が世はつらし
誰に贈ろう 旅路の花を
乙女可愛いや 鈴蘭抱けば
遠いふるさと 月さえ霞む

泣くな乙女よ 朝霧晴れて
空は薔薇いろ もう夜が明ける
小鳥啼く啼く 涙も消える
旅の乙女は 唄うてゆくよ
×