午睡

夏に見透かされた
ささやかな野望
心の隙を縫って
諦め抱かせる
叶わないと悟って
見送ることも
他人に託すことも
できず立ち竦む

やっとの思いで息を吐く
身体を起こした後部座席
車窓から見た
同じ色の空と
何処まで行くのか
自由の翼

高架下の川に幽霊が出るの
県道10号線
道なりに走って
太平洋沿いの
国道338号線に出る
赤いビートル

底知れぬ切なさに襲われて
温かい日差しから目を、逸らす
あなたの気持ちが
いまならわかる
10年越しの左ハンドル

あなたが泣いたこと
忘れられないの
あの頃の私は
大人の涙も
その悲しみさえも
知らなかったから
そして自分のこと
嫌いだったから

あまりに遠くて 目が眩む
痛いほど 透き通る
マリン・ブルー
別れの言葉を
選ぶ 間もなく
どこかへ消えていく
あの昼下がり

浅い眠りで見た
ビードルビーチの
広い駐車場で
笑い転げた夢

この町で待ってるわ
いつまでも
新しい車で迎えに来て
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