誰も愛せない人

肩を撫でる淡い髪。
遠く消える陸橋。
星の数だけ泣いたチェシェと、
記憶を無くした煙草。

穴の空いた緑のネット。
焦げた花に降る小雨。
難破船への救難信号。
それが君への愛。

誰も愛せない人へとどうかゆるがない愛を。
何も変わらないものなどある訳がないのにね。
誰も愛せない人へと今は何よりも愛を。
一人きりで生きるには君は優しすぎるよ。

ヨブを信じた吊り目の君。
サンタモニカの励行。
くだらないこの毎日を
僕は愛してるのに。

夏が秋に変わる瞬間。
蛹の中、空洞。
踊る少女には靴がない。
ずっと気づいてたでしょう?

瞼の裏に吹いた風。
思い出したくない季節。
愚かだから人間だ。
ほんと、悲しいほどに。

誰も愛せない筈だよ、こんな苦しみの辺境。
まかり通った私利私欲全部置いてゆくよ、一緒に。

誰も愛せない君へとどうか揺るがない愛を。
わかりきってる不幸程、僕ら信じちゃうよね。
誰も愛せない君でもどうか許される愛を。
それが君で良いんだよ。ずっと、気づいてたでしょう。
全部気づいてたでしょう。
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