金星

初めて倒したボウリングピン。
僕、慣れてないんだ。
こういう雰囲気も。
例えば、クソダサい POPS で思わず踊ってしまうよな。
決めていたんだ一生涯、僕の日々の手綱は握らせないってさ。
それなのに、朝が来るまでは帰らぬ理由を探している。

君は僕より夜に馴染んだ。
意味はないけど、僕は口論がしたくなった。

金星、僕だけに抱きしめていさせてお願い。
もう夜を告げなくてもいいよ。
僕は、身勝手に君の周期を遮る。

味など無くした発泡酒、
とてもよく似た君の奔放主義だとか、
僕だけ文法を知らない時代にそぐった言葉も、
君は僕より上手く馴染んだ。
夜半の夏、ただ微温い後悔を知らない。

金星、僕だけを抱きしめて。
未来はなくていい。
もう僕は間違いでもいいと、
君を奪って盛場、夏の夜、転げる。

朝明けも、夕暮れも、
君の海馬の残像になれたら。

金星、僕だけに抱きしめていさせてお願い。
もう夜を告げなくてもいいよ。
散々僕は語ってた。
ため息みたいな理由が欲しくて。
歓声、ざわめきが置いてゆく。
手よ、離さないで。
明日また暗がりへと消える君をおいて、
最終駅、改札前、僕は両手に夜風を隠した。
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