遠視のコントラルト

髪を梳く手が 横顔に触れて
同じ色に染め上げられていく様で
いつからか僕は 嘘にも慣れて
たゆたうその目には狂ったような振動が見えた

降っても晴れても もう簡単にはいかない
脚は動かない躊躇いも隠せないね
細胞 感触 重なるだけだろう?
「ほらそう、絶対ね」その切れぎれの声で歌い出して

いつかもう目もきっと見えなくなってく
足が絡まるそれすら愛おしい徒労?
泡を食らえば意味をゆすられて
吐き出すこともできないね

容易く色は変わって 遠視のレンズ越しに消えた
どこまでゆくの? もう止んだ雨の中に
抑え込んだ笑みの影だけ残して
焼きついたままの化石した景色を
ただ見ている まだ見ている
反射した光の果てを掠めて消えてゆく

瞬き 劈き 蠢めき回り 敵わないな
笑い声も履き違え鋭角に胸を抉り取られ
眩き湧き上がり 躍り来る
怠慢な陽射しを吸い込んだ
一切忘れながら流れ出した

いつからか目はもっと見えなくなった
舌は絡まり息だけがただ白む午後
光の溜まりに腰をかけている
君はとても綺麗だね

優しく君は笑った 遠視のレンズ越しに消えた
そこまでゆくよ あともう少しだけそうさ
待ってておくれ どうか忘れないでくれ
「焼きつくだけじゃ」「触れさせて」
「もう一度 さあ」「まだ見えない?」
僕の所為で笑ってよ!乱射した言葉は虚空を舞う

誰の所為にしたい? 優しく君は笑った?
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