実はもう熟れ

踊るきみを見たのは
あの夏の日一度きり
あまりにも儚くて
もうめぐり逢えない気がして

ほら誰も寄せつけぬ素振りで
腕からそっとすり抜ける
このままじゃきっと踊りの渦に見失う
けどその日のきみは煌いて
聖なるオーラ振り撒いて
今その手がふっと ぼくの頬に触れた

二人やがて結ばれて
子どもたちも手を放れて
忘れたのか実はもう熟れ
胸騒ぎがしないか

けどあの日のきみは輝いて
フロアはみんな背景で
あの夜のぼくら甘い夢に溺れた
ほら誰も寄せつけぬ素振りで
群れからそっと抜け出して
濡れた目で言った
「キスは命の火」と

ほら今でもきみは煌いて
腕から腕を泳いで
このままでいっそ踊りの渦に巻かれて
今誰もがドン引きするくらい
何度目の恋と青春を
ただきみをもう一度
遠目でお燗してみたい
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