静寂の汀

「夜風にあたってくる」って
ほとんど狂いそうな部屋から逃げなくちゃ
答えは決まってたんじゃないか
思わず吐き出しそうな苛立ちを何度も抑えて

互いに不幸ならきっと離れることになるのに

埋まらない日々の寂寥も不安で生まれた幻想も伝わらないよ
一瞬も合わない目の色に
きみの悲しみや疲労が交錯していて
その落ちる涙を、話題もなしに拭おうとしていた

嵐は静まったようで、じわりと滲むような黒い静けさが残った
決まりきった相槌ばっかを吐き出して
これでおさまったのだろうか

泣き声は静寂に汀を立てるよう
足りないものだけ互いに求めてしまって
埋まらない日々の寂寥も
不安で生まれた幻想も

背中合わせの心音がまだ頬を叩くから
波際に浮かぶくすんだ感傷の行先に
話題もなしに、また声を絞って踏み出す
揺れる肩の向こうまで
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