春海月

ふわり この瞬間を
時間さえも抜け出して
ただ美しく揺蕩うだろう
そして あの約束を
思い出すのも忘れて
海月みたいな雲みたいだな
僕も、あなたも

水平線に連れて行って
霞がかった 微睡みの中
あなたのことを考えている

何か忘れてしまったようだ
大事なような 他愛ないような
初めからないような

低気圧が無数の願いを
吸い上げては遠くに飛ばす
抱き締めてもいずれどこかへ
消えてゆくもの

ふわり この瞬間を
時間さえも抜け出して
ただ美しく揺蕩うだろう
そして あの約束を
思い出すのも忘れて
海月みたいな雲みたいだな
僕も、あなたも

可憐に咲く花を見たいけど
足しては引いて 引いては足して
繰り返す日常さ

明日のこと 綺麗なものを
書き留めては丸めて捨てる
うまく進めないそんな僕らを
誰が責められようか

ふわり この瞬間を
不安さえも飲み干して
空へと伸びる根無草
そして 風が吹いて
元の姿さえ忘れて
海月みたいな雲みたいだな
僕も、あなたも

嗚呼、あなたは花になって
そして僕は風になるだけ
いつかそれも曖昧になって
忘れゆくなら

ふわり この瞬間を
時間さえも抜け出して
ただ美しく揺蕩うだろう
そして あの約束を
思い出すのも忘れて
春の空に滲んでいくだけ
海月みたいな雲みたいだな
僕も、あなたも
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