視えないふたり

茫、と外を眺める横顔を照らす月明かり
少し開いた窓からそよぐ
夜風が前髪を撫ぜていた
まるでこの広い世界でふたりきりのように
この部屋にはここにしかない時間が流れている

触れた先から凍えてしまいそうな
半透明な胸の内側を
柔らかな視線が 声が 優しく溶かして

写真や鏡には映らない
瞳の奥にだけ私がいる
ひとりでいたのなら気付けなかったよ
言葉って、優しいんだね

遠回りの家路に並んで見上げた流れ星
嬉しくても涙は出ると
それも少し温かいと知った
してあげられることなんて何もないけど
同じだよって笑う君にまた少し溶けていた

ずっと見ていた夜に浮かぶ月も
君の側では特別に見えて
不確かな日々の全てが愛しく感じて

思い出も未来もなくたって
確かなものだけがここにあると
となりにいるだけでちゃんと伝わるよ
心って、あたたかいんだね

写真や鏡には映らない
潤んだ私だけ覚えていて
このまま溶け合って水滴みたいに
唯一つになれたなら

いつか消えてしまっても
記憶の中にだけふたりがいる
言葉にしなくてもちゃんと聞こえたよ
ねぇ、君って 優しいんだね

優しいんだよ
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