たそがれ仕度(しのび泣き)

遠い樹海へと
夕焼けが溶けてゆく
下げたトランクの
重みだけ増す

彼を誘ったのは
最後の賭けなのよ
愛をとりかえす
つもりだった

長い悲哀(かな)しみと
優しさの 二本道
そうね 苦しみを
選ぶことないわ

長いレール闇が下りて
暗い駅で一人きり

家具は マホガニー
なつかしい 琥珀色
全て始末した
旅に出る朝

彼を誘ったのは
最後の賭けなのよ
愛のたそがれを
恐れてた

チェスも お喋べりも
何もかも すててきた
シャワー 栓しめて
鍵もすてた朝
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