ヘブンズバグ

懐かしい風が触った
楽観的な季節は
吸った酸素を身にまとったような庭
目に刺さる朝日を嗅いだ
愛を知らぬ少女の 記憶は糸
固く結べばほどけはしないの

「動物が好きなのね」
「人が嫌いなんだ」
大人になりたい訳じゃない 自由が欲しいだけ
みだりに触ったら 少しだけ血が流れる
それがきっと君の心の形だった

わたしは糸を吐く 糸を吐く
つながりの色は手にとれないもので
ドラマチックな筋書きの類はそこに無いの
嘘を吐く 嘘を吐く
「友達でいてね」なんて願いも
粉々になっていた将来も
ひたすらに根をはって 雪どけを待つ繭玉は
魂の行方も知らないままの あたたかい恋だった

懐かしい風が触った
楽観的な季節が
ちょっとセンチな君のまつ毛をなでた
目にしみる朝日を聴いた
恋を知った少女の 言葉は嘘
一度壊れたら戻せないの

「お絵かきが好きなのね」
「文字が読めないだけだ」
全てを知りたい訳じゃない 無知が怖いだけ
みだりに触ったら 少しだけ血が流れる
それがきっと君の心の形なんだ

私が先を行く ただ紡ぐ
つながりの色が手からこぼれ落ちて
ドラマチックな筋書きをなぞって 布になった
嘘を吐く 嘘を吐く
必ず見つけてなんて願いも
涙で重くなった ナップサックも
旅立つ夢を見た 雪どけを待つ繭玉は
広げた手のひらにたしかに 風を浴びたんだ

またどこかで会えたらいいね
思い出せなくても許してね
お願いは 言葉で
言わなかった
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