ぼく、未来からきました

「今からちょうど10年後
キミが経験する未来から
やってきたボクは
猫型のロボット!」

『今からちょうど10年後
僕が経験する未来から
やってきたなんて嘘だ。
だって10年後に僕はいない。』

「そっか、それは偶然、
実はボクの大切な人も10年後
もうこの世界で息をしていない。」

ロボットは言った

「ボクは、死ぬのもなんにも怖くない。
悲しくない。涙も出ない。
なのにどうして?
アノ子が、
いない未来はいらないなんて
望んでしまうんだろう。」

「どこでも行けると思っていたドアの
先にアノ子の笑顔だけ見えなくて。
心が無いからロボットだったのに。
ボクは、
いつからボクじゃなくなったの?」

『今からちょうど10年後
僕が経験する未来なんて
ないのが普通と思っていた。
だって10秒前僕はここから

飛び降りるはずだったんだ。
誰にも気付かれないはずだった。
こんな僕の前に現れちゃだめだよ。』

人間は言った

『僕ね、本当は死ぬのが怖くてさ。
できればさ、生きていたくてさ。
なのにどうして?
生きれば、
生きるほど笑うことさえも
忘れてしまうんだろう。』

『誰かが死ぬほど生きたかった明日も
僕にとってはどうでもいい今日だった。
心が有るから人間だと言うなら
僕は、
そろそろ僕じゃなくなっちゃうのかな。』

「似たもの同士の人間さん。
どうせ死ぬのならその心
ボクのと半分こしないかい?」

『君からもらった心はあったかくて
僕の心は今にも凍りそうで。
変わってしまった自分も自分なのに
なんで、涙が出ちゃうんだろう。』

「どこでも行けると思っていたドアを
壊して10年前のキミに会いに来た。
ボクの心はその涙を見つけるために
生まれた秘密の道具だから。」
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