Epiphyllum

まだ二人には余白があった頃
分かち合う
悦びに委ねた残り香だけが
漂っている
刹那的な傾倒の季節はとうに過ぎ
道連れの心だけを置いていく
安寧の閃光にすがりつき
開いた花弁は 堕ちていった

咲き誇る花と散り
また来世を待つ
祈りすら届かぬなら
もう月へ還そう

手折られた 腐らせた

「儚い美 儚い恋 ただ一度会いたくて」
心と身を引き裂いて
去り際に向かって意味を
見出したいわけじゃない

向き合っていると思っていた
一方的な視線を傾けて刹那を信じた
慈しみや愛のすべてを捧げたかった
心の全てをあげたかった
開ききった花弁が閉じる
少しずつのさよならを世界に
告げてできたのが 私だ

溶け出した 抉られた

咲き誇る花と散り
また来世を待つ
祈りすら届かぬなら
もう月へ還そう
×