母の舞扇

花の振り袖 誰ゆえに
なみだに濡れて 重いやら
おとめ十九の 春ゆきて
肌身はなさず 抱きしめる
母のかたみの 舞扇

君はやさしく 初恋の
面影ばかり ただ恋し
忘れて踊る 黒髪も
なぜか乱れる やるせなさ
母のなさけの 舞扇

夜の鏡に しみじみと
うつして偲ぶ 母の顔
わたしの折り 一つだけ
めぐり逢わせて 縋(すが)らせて
母のいのちの 舞扇
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