おやすみなさい

脱ぎ散らかされた身体に触れる
髪を、とかす
レコード棚の裏で泣いている
君を、探す

いたずらはいい加減これくらいにしておこうね

おやすみなさい

まやかしの中で躓き転ぶ 鍵を、鍵を失くす
白いシーツに磔、モルフォ蝶。
髪を、髪をとかす
君のそれで肺の底が満たされて
部屋で鳴る音のすべてが寝息のようで
憎しみを裏返した夜はもう、来ないまま

おやすみなさい

朝日に切り刻まれた僕が
風に吹かれて散り散りになってしまう
震える手でペンを握り締めて
君のショートボブを描こうとしていた
可愛く描かなきゃ怒られるから
可愛く描かなきゃ怒られるから

可愛く描けてしまうから
それだけでおしまい

おやすみなさい

君が目を覚ます夕餉時を
僕はいつまで待てば良いだろう
僕はいつまでも待ってしまうだろう
そのまま朽ち果ててゆくんだろう
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