つかの間の雨

あなたがそっと右手を出して
雨に濡れた私の髪をうまく左にとかしてくれた
ほんの私の髪のくせまで
あなたは憶えてくれたのですか
あなたはとても気がつく人だったけど
気づいて欲しいものは他にあった

突然雨が降り出した町を
あの頃いつもそうしたように
二人肩を寄せて歩いた
ほんのひと降りの雨と
たったひとつの傘が
最後のドラマを作ってくれたのに
肩にまわしたあなたの手には
あの頃のぬくもりはもうなかった

空があかね色に燃えつきて そして
つかの間の雨もあがってしまった
ビルの谷間に沈む夕陽を見て
悲しいと思うのは私だけでしょうか
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