よみびとしらず

東の空に かげろう
揺らぐ 炎に似た影
零れ落ちた 一篇のうた
よみびとしらずのうた

触れた砥水に うつろう
揺らぐ かすかな花影
零れ落ちた 美しきうた
よみびとしらずのうた

名もなきうたは
風に消えていった
誰にも知られる
(知られる)
こともなく

名もなき花は
咲いたことにさえ
気付かれることは
(気付かれることは)
ない

一寸先は
(壁一重)


一寸隣は

(紙一重)

触れた砥水に うつろう
揺らぐ かすかな花影
零れ落ちた 忘れ得ぬうた
よみびとしらずのうた

かの花は
(花は)
呼ぶ名を持たず
(持たず)
かのうたは
よみびとしらず
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