恋唄

冷たい海の中、身を沈め
愛しいあの人を想うの
毎日ひどいことをするけれど
本当は優しい人なのよ

二人きりの小さな世界
誰にも壊すことは出来ない

体に残るこの傷跡
アタシを愛してる証拠だと
呪文のように唱えたわ
いつまでも側にいたいから

あなたの二の腕が恋しい
あなたの首すじが恋しい
あなたの耳たぶが恋しい
あなたの一重まぶたが恋しい
あなたのスネにびっしり生えた毛が恋しい
あなたのささくれた人さし指の爪が恋しい
あなたの微熱まじりの体温が恋しい
あなたのくっきりと浮き上がった助骨が恋しい
あなたの背中にある大きな黒子が恋しい
あなたの指が愛撫した乳房の痛みが恋しい
あなたのカミソリが切り裂いた額の傷口が恋しい
あなたの拳に殴打されてこみ上げる胃液の味が恋しい
嗚呼、あなたが恋しい…

ひとこと「ごめん」って呟いた
取り出したピストルであの人は
自分の頭をぶち抜いた
アタシ一人を残したまま
アタシ一人を残したまま

冷たい海の中、身を沈め
愛しいあの人を想うの
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