椅子

消えていくあなたが
少し背中をまるめ
なだらかな坂道
街の市場へ続く
別離は私がむしろ望んでいたのに
何てこと!
私が涙こぼしているわ
浮気(あやまち)ならよかったのにね
うらむだけですんだわ
おたがい 別の
生き方 ゆずれずに……

まだあなたはそう 若いし
夢さこれからなの
同じ月日の前には
女は哀しいね

あの頃は微笑いが
いつも満ちていた窓
愛だけですべての
不安 忘れられたの
振り向く部屋にはあなたの愛した椅子(いす)
何てこと!
そこだけ白い陽射しが揺れる

眠れぬほど必要だった
夜も確かにあった
ただ今 言える
何かを逃したの

私だってこれからだわ
素敵な恋をするわ
だけどあなたより熱く
誰も愛せない
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