あがらっしゃい

よしず囲いの 屋台を叩く
霙まじりの 雨の粒
あがらっしゃい あがらっしゃい
宵の口から お客といえば
あんた一人の すきま風
嘘をからめた 身の上ばなし
こぼしたくなる こんな夜は

取柄ないのが わたしの取柄
根なし花なし お人好し
あがらっしゃい あがらっしゃい
襷はずして 口紅でもつけりゃ
女らしさが でるかしら
野暮で無口な 似たものどうし
さしで飲むのも いいじゃない

夢でなければ 逢えない人も
今じゃ夢にも 出てこない
あがらっしゃい あがらっしゃい
菊の湯どおし ふるさと料理
味の決め手の 落し蓋
つまむ情けが ほろりとからみ
酒の苦さが 身にしみる
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