我が良き友よ

下駄を鳴らして奴が来る
腰に手ぬぐいぶらさげて
学生服にしみ込んだ
男の臭いがやってくる
ああ 夢よ 良き友よ
おまえ今頃 どの空の下で
俺とおんなじ あの星みつめて
何想う

可愛いあの娘(こ)に声かけられて
頬を染めてたうぶな奴
語り明かせば下宿屋の
おばさん酒持ってやってくる
ああ 恋よ 良き友よ
俺は今でも この町に住んで
女房子供に 手を焼きながらも
生きている

男らしさと人が言う
おまえの顔が目に浮かぶ
力ずくだと言いながら
女郎屋通いを自慢する
ああ 夢よ 良き友よ
時の流れを恨むじゃないぞ
男らしいは やさしいことだと
言ってくれ

家庭教師のガラじゃない
金のためだと言いながら
子供相手に人の道
人生などを説く男
ああ 夢よ 良き友よ
便りしたため 探してみたけど
暑中見舞が返ってきたのは
秋だった

古き時代と人が言う
今も昔と俺は言う
バンカラなどと口走る
古き言葉と悔みつつ
ああ 友と 良き酒を
時を憂いて 飲み明かしたい
今も昔も この酒つげば
心地よし

学生達が通りゆく
あいつ程ではないにしろ
まじめなのさと言いたげに
肩で風切って飛んでゆく
ああ 友よ 良き奴よ
今の暮らしに あきたら二人で
夢を抱えて 旅でもしないか
あの頃へ
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