あなたとわたしの物語

あなたもわたしも今を泳ぎきらねば
もともと自由な一匹の魚だったはず
あんなに優しく美しい物語の
始まりを深く暗い海に沈めてはいけない

波に逆らったり荒れ狂ったり
身をそらしよじり甘えもがき泣きじゃくっても
乙女の祈りにわたしは決して
いどみかかるほど汚れたくないのです

恋というにはうしろめたくて
愛というには行き場がなかった
折り重なる堕落の果てに私は
“希望”ただそれだけを見つめていたのです

苦しすぎるよね悲しすぎるよね
死にたいよね生きてゆけないよね
こんなに互いが互いを試しあっても
いとおしく叫ぶ声だけが真実だった

暮らしにまみれ豊かさの裏側で
どうしても忘れきれぬ事がひとつだけあった
忘れきることは罪じゃないけれど
あなたもわたしも明日を嫌になっていたのかもしれないね

一人だと認めるにはやりきれなくて
二人だと思うには許しきれなかった
あなたの無言の丸い背中を抱きしめたら
わたしがわたしでいることを忘れられたのでしょう

恋というには物足りなくて
愛というにはせつなかったから
わたしの胸の中でたとえほんの一瞬でも
あなたがあなたでいることを忘れられたのでしょう

だからあなたの傷口に今わたしは
わたしの傷口に今あなたが
そっと触れ合いくちづけをしよう

永遠にあなたとわたしでありますように
永遠にあなたとわたしでありますように
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