エルの楽園 [→ side:E →]

―――そして...幾度目かの楽園の扉が開かれる……

白い大地に 緋い雫で 描かれた軌跡 罪の道標
古びた金貨 握り締めたまま 這い擦りながらも 男は笑った

廻るように 浮かんでくる 愛しい笑顔 すぐ其処に
夢幻の果てに 手を伸ばす様に 扉に手を掛けた

―――そして...彼の現実は朽ち果てる……

少女が小さく 咳をする度 胸の痛みが 春を遠ざける
襤褸い毛布でも 夢は見られる 愛を知った日の 温もり忘れない

眠るように 沈んでゆく 愛しい世界 水底に
夢幻の果てが 手を招く様に 扉は開かれた

―――そして...彼女の現実は砕け散る……

ねぇ...お父様 その楽園ではどんな花が咲くの?
ねぇ...お父様 その楽園ではどんな鳥が歌うの?
ねぇ...お父様 その楽園では体はもう痛くないの?
ねぇ...お父様 その楽園ではずっと一緒にいられるの?

窓を叩く夜風 弾む吐息 薄暗い部屋 楽しそうな談笑
虚ろな月明かり 白い吐息 薄汚い部屋 痩せた膝の少女

幾度となく繰り返される問いかけ 尽きることない『楽園』への興味
嗚呼...少女にはもう見えていないのだ 傍らに横たわるその屍体が…

...男の夢想は残酷な現実となり ...少女の現実は幽幻な夢想となる
...男の楽園は永遠の奈落となり ...少女の奈落は束の間の楽園となる

...お父様――― その楽園ではどんな恋が咲くの?
ねぇ...お父様 その楽園ではどんな愛を歌うの?
...お父様――― その楽園では心はもう痛くないの?
ねぇ...お父様 その楽園ではずっと一緒にいられるの?

ねぇ...お父様 その楽園ではどんな花が咲くの?
ねぇ...お父様 その楽園ではどんな鳥が歌うの?
ねぇ...お父様 その楽園では体はもう痛くないの?
ねぇ...お父様 その楽園ではずっと一緒にいられるの?
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