岬のおんな

泣きたきゃ泣きなと つき放すように
潮鳴りが咽ぶの 白砂の渚を
古ぼけた宿の 番傘ひろげ
やどかりのように さまよえば
青いみれんが 素足にからみ
思い切る瀬が 越せないの
岬のおんな

すてられる前にと さよならをしたの
冷めかけた心の 温もりを抱きしめ
秋風が走る 貝殻径(みち)を
鈴虫のように 泣きながら
過去へ過去へと 歩いています
あなたなしには 生きられぬ
岬のおんな

ぼろぼろになった 思いで抱いて
石ころのように しゃがんだら
意地も崩れて 潮路に濡れる
そうよ私は 別れても
あなたのものよ

岬のおんな
×