夜汽車にて

北へとひた走る夜汽車の片隅は
あてどない思い出のめぐる時
ガラスに映る見知らぬ人の顔
頬ぬらすひとしずく 目にしみる
涙のその意味は知るわけないけど
私もつらい日の覚えがあるから
愛した人のこと心でまさぐれば
忘れることだけがいいみたい

嘆きやよろこびの旅心乗せたまま
この汽車は裏海へ出た頃か
見えない暗闇を見続けるその人の
寝もやらぬ横顔が淋しそう
誰かと別れた日 雨降る季節に
私も似たような旅しているから
タバコをとりだしてその苦さ楽しめば
哀しみの薄れ方 気がつくの
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