刑事

徹夜続きの捜査の途中で 生まれた息子が今日旅に出るという
ほとんど会話もないまま暮らした 妻もいつしか年老いたことにさえ気付かず
自分の咳で目覚めた夜の 煙草の匂いが染みついた仮眠室
ツィード の上着を布団がわりに 少し痛む肘に掌をあててみた一人
正義という名前の為に 家族を犠牲にしてきたこの俺が
子供の為に法を犯した 犯人を責められるだろうか
彼の手首に手錠をかけても 心に手錠はかけられない

休みもとらずに働き続けた 古いタイプの刑事と噂された
それを誇りに頑張り通した 仕事より大切なものなどないはずと思ってた
みぞれ混じりの張り込みの中で 犯人の家庭の窓の灯りが何故か
うらやましく見えたその時感じた
このまま刑事でいつづけることなどもうできない
正義という名前の為に 家族を犠牲にしてきたこの俺が
子供の為に法を犯した 犯人を責められるだろうか
彼の手首に手錠をかけても 心に手錠はかけられない

辞表を胸にタクシーに乗った 旅立つ息子の背中が見たくて
みぞれは雪にいつしか変わり 刑事は一人の年老いた父親に変わった
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