義務

「今日だけは人間らしくいたいから
デモの列で歩いてくるよ陽気にね」
というと
女房は子供をあやしながら
「気をつけてね、行かせたくないけど」
と言ってから
「そこまで私が立ちいることは
ゆるされないわね」とつけ加えた
「ボクは庶民です
どこの党にも関係ない
税金を払っている一庶民です
ボクが好んでいるものといったら
貧しい詩を書くこと位で
国の運営などというものは
ふだんは忘れていて
新聞も読みすてちまう
あくせく働く一庶民です」
「でも、デモに行くからね」というと
「変なシャレ」と女房は笑って
心配しているのが顔にあらわれていた
それでボクは陽気におどけてみせて
団地の階段を二段づつとびおりると
今日は胸をはって
静かに歩いてこようと
思ったのだった ムムムム‥‥‥‥
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